172.心にささる3箇所 〜「悪童日記 (ハヤカワepi文庫) 」 [読書感想文]
(年間100冊の進捗 100冊/365日×319日目(11月15日)ー72冊目=▲15.39冊)#mhks(本)
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この本は、先日参加した「作家と立ち飲み」の時に、奥野先生に勧められユーゴー書店で買いました。
内容は、子供の持つ「残酷さ」がこれでもかと描かれております。しかも「無邪気」でないところがまた怖い。
そんな物語の中から、心に「刺さった」箇所を3点ご紹介いたします。
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・体を鍛える(p25−26)
○おばあちゃんに預けられた主人公の双子の男の子。二人は、おばあちゃんの暴力に耐えるためお互いに殴り合う。
・ぼくらは、炎の先端に手を通す。ぼくら自身の腿、腕、胸にナイフを突き立て、傷口にアルコールを注ぐ。そのたびに言う。
「平気だ」
こんな練習をしばらく続けて、ぼくらはほんとうに、何も感じなくなる。痛みを感じるのは、誰か別人だ。火傷し、切り傷を負い、苦しむのは、誰か別人だ。
ぼくらはもう泣かない。
☆逃げてビクビク暮らすのではなく、自分たちにできることで現実に立ち向かう。
周りから見れば「おかしな行為」であっても、二人にとっては「修行」。
しかし、ここまで自分たちで痛みを知ることは、逆に他人の痛みを知ることにもなるのかも。
この度合いを超えると次はもっと怖いことに・・・・
・精神を鍛える(p30−32)
○今度は、周りからの罵詈雑言に耐えるために、お互いを罵りあう。
・「おかま野郎!卑劣漢!」
こうして、言葉がもう頭に喰い込まなくなるまで、耳にさえ入らなくなるまで続ける。
・しかし、以前に聞いて、記憶に残っている言葉もある、
おかあさんは、ぼくらに言ったものだ。
「私の愛しい子!・・・・(略)」
これらの言葉を思い出すと、ぼくらの目に涙があふれる。
☆悪口を聞き流せるようになるまで言い合う、というのは納得できた。
しかし、考えさせられるのはそのあと。
母の暖かい言葉さえも、お互いに言い合うことで、その意味を薄れさせていくのです。
・ぼくらは言う。
「私の愛しい子!・・・(略)」
いく度も繰り返されて、言葉は少しずつ意味を失い、言葉のもたらす痛みも和(やわ)らぐ。
☆暖かな言葉も、たまに聞くから良いのであって、心のない形だけの言葉はいつしか身体に、心に届かなくなる。
○戦争とは・・
酒場にて、男達が「戦争の苦しさ」を口にすると、女達は・・・
・あんたたちは得だよ。いったん戦争が終わりゃ、みんな英雄なんだからね。戦死して英雄、生き残って英雄、負傷して英雄。それだから戦争を発明したんでしょうが・・・(p149)
☆個人の感情の争いから、共同体、国家の争いへ。
前線は「なぜ戦争をしているのか?」の意味もわからず「英雄」という言葉に踊らされていく・・・。
物語の最後には、おばあちゃんとの「ほろっ」とくる場面もありますが、最後に、また恐ろしい結末が・・・
ドラゴンボールの修行のように二人の「訓練」を読んでしまいますが、あんなに「明るく」はありません。
人間のもつ「闇」の部分、自分の知らなかったことを知るのにはいい本なのかもしれません。
この物語は、3部作でまだまだ続きます。
読みたいような読みたくないような複雑な気分にさせてくれる本です。
ありが当ございました。
タグ:アゴタ クリストフ
おはようございます。
nice! ありがとうございました。
三部作は読みましたが
続きがあることは知りませんでした。
by ビタースイート (2010-11-16 03:43)